※なんか黒ラルたんが大団円を迎えた後らしい
※他のことは知らん








 もふもふと茂る芝に寝転がって、わたしたちは雲を眺めていた。ずっと前は、このまま飛んでいけたらいいのに、と思っていた気がする。けれど、今そんな風に思わないのは、わたしを好きだと言ってくれる人がいたり、嫌な顔をしながらも傷を心配してくれたりする人が沢山いるからなのかもしれない。
 罪を償うってことがどんなことかは、わからない。
 けど、何かしなくちゃ、とは、いつも思う。

 でもたまにこうして休むくらい、いいかな、とも思うんだ。
 前なら全然そんな気も起こらなかったんだけど。そうしてもいいよ、って全部わかって言ってくれる人たちがいるって、なんだかすごく、安心するんだって、最近知った。


 それはそうと、成り行きで一緒に寝転がることになった―――この人は一体なんなんだろう。

 「…」
 「…」

 なんかガラスのような目でずっとこっち見てくるんですけど。
 いや、わかってるんだけど。この人が一応、わたしを縛ってた規制魔術を解いたりして、わたしがここにいられる理由の一端を作ってくれた「元制作者」の1人らしい、とか、そういうことは把握してるんだけど。
 正直、「じゃあなんでこの人はわたしのこと助けるように動いたの?」って自分に聞いても、わかんない、の一言しか返ってこない。だってそもそも知り合いじゃなかったし。お父さんとお母さん(って呼べって言われた、この後に及んで。馬鹿じゃないかと思ったけど、嬉しいので従うわたし。もっと馬鹿だ)とも知り合いじゃなかったみたいだし。

 あんまり自然には見られないような、桃色に近いピンク・ブロンドの彼女は、近頃、私をこうして間近で観察しにくる。

 「…」
 「…」

 会話はない。
 きまずい。
 ひゅうう、と風がふいて、そいつの頭に枯れ草が沢山かかった。私の頭にも沢山かかってるんだろーな、と分かったので、私は上半身を起こして頭を払った。そいつは寝転がったまま、こちらを見ている。

 「…なんで見るの」

 思い切って聞いてみた。

 思い切りが必要か、って言われたら、その通りだ。わたしは賢者の塔があんまり好きじゃない。利用されてたのもあるし、おとーさんたちを傷つけるのを良しとしてたとこだし。言えた立場じゃないけど、だからこそ、今度はわたしがおとーさんたちを守ってあげなくちゃ、と思ってる。
 そいつがわたしのことを利用するなら、わたしはそれを防がなくちゃならない。

 「…ラルムは」

 そいつは、暫く間をおいたあとに、瞬きを何度かして、こう答えた。

 「お日さまの匂いがするので」



 馬鹿じゃないかと思った。
 わたしを陥落させるにしては下手すぎる文句だった。だいたい、お日さまの匂いっていうのは、ダニとか、そういった醜いものの死がいで出来てるって聞いた。ぜんぜん嬉しくなくて、そのくせ、変に事実をついている。嫌味にしかならない。

 わたしはバカなターゲットにトドメをさす時の顔をして、「それ嫌味?」と聞いてやった。これで怒るなら下手な役者。なだめにかかるなら上手な役者。わたしは情に訴えるだけで勝てるようなそんなに簡単な相手じゃないって、思い知らせてやる。


 「人間は」

 わたしの顔をずっと眺めたまま、そいつは答える。わたしはそいつがどんな風に答えるのか、真剣に観察した。…無表情とガラスの目玉は、変わりなかったけど。

 「ダニや黴が日の光で殺されたのを確認して、安心を覚えます。それがお日さまの匂いです。害なるものが無くなったことを安心させるのが、お日さまの匂いです。…これは嫌味ですか」


 さっきよりもっと強い風が吹いて、私は振り返っていた顔を思わず両手で覆った。ばちばちと手に枯れ草が当たる。

 「バカじゃないの」

 私はそのまま呟いた。ばかじゃないの。
 風が止んだので目をあけると、そいつのピンク色の髪には枯れ草が沢山ついていた。見るからにバカだった。

 私のとなりでそんな奴が昼寝をしているのはとてもバカみたいに見えるので、仕方ないから、枯れ草を払ってやる。
 きみの悪いガラス玉の目がようやく閉じたので、わたしは、そいつの名前を聞いてあげてもいいかな、と思った。
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