大海賊ガールヴェーラは世界中を股にかけた。

一番目のガールヴェーラは魔術の才、たくさんの手下を引き連れて、世界中の宝物を一人占め。
二番目のガールヴェーラは投資の才、残された宝を仲間のために大判振る舞い、小さな王国の出来あがり。
三番目のガールヴェーラは戦いの才、せっかく残った財宝を、戦争のために使いきる。
四番目のガールヴェーラは才能がなく、とうとう彼はひとりきり。


五番目のガールヴェーラは探索の才、一族の残した色んな秘宝を見付けては大喜び。
六番目のガールヴェーラは守護の才、愛した人とその子供を守り切って大往生。
七番目のガールヴェーラは何もせず、何を持っていたのかわからない。


そうして今代、八番目のガールヴェーラには料理の才。

「やあやあいらっしゃい!あんた新顔だね?八つの海を味わうならここ、ガールヴェーラ・フィッシュマンズ・バーにお任せあれ!」





 もし君が魔道学院の生徒だとしたら、こんな噂を聞いたことはないだろうか?とびきり暑い熱帯夜、ぎい、ぎい、と船を漕ぐような音が、外郭に響き渡る噂を?
 噂を目の当たりにした君は、運がいい。目を皿のようにして、君の周りをよく観察することだ。見慣れない、古びた扉がきっとあるはずだから。目印は、潮の香りと扉の角にへばりついたフジツボ。神出鬼没、店主にさえも次の航海場所がわからない、ガールヴェーラ・フィッシュマンズ・バーの入口はその扉だ。

 「はい、いらっしゃい!今日は新鮮なタコが入ってるよ!…なに?タコを知らない?勿体ない人生だ!さあ座って、あんたにとびっきりの海を味あわせてあげるから!」

 君がもしその扉を開けたなら、つるつると光った洞窟の中に構えられた賑やかなバーが君を迎えることだろう。店主が若い女性だからと不審に思っても、決してそれを口にしてはいけない。彼女のボブ・ヘアーに載ったキャプテン・ハットと、細い腰に下げられた銀のカットラスは伊達物ではないのだから。彼女がそれを耳にしたなら、継いできたガールヴェーラの名にかけて、決闘を申し込まれることになる。強いのかって?そりゃあ強いさ、何せ彼女には100の味方が付いている―――つまり、他のお客と従業員がね。負けた彼女が拗ねて料理を作らなくなっちゃあ困ってしまう、そんな奴らを100も倒さないと、彼女の元へは辿りつけない。面倒ごとは、避けたが無難ということさ。
 まあ、そんなこともなければ彼女はとても気のいい女性だ。君が初めてのお客だと知ると、八つの海の香辛料と、八つの海の酒の中、君の口に合いそうなものを一生懸命探してくれることだろう。

 どうしてそんなに沢山の酒があるのかって?

 答えは君の入ってきた扉にある。学院で習ったことを良く良く復習して、何が起こっているのか考えてみるといい。もし君があまり成績の良い生徒でないのなら、チップを重ねて店主に火酒を御馳走すれば、ひょっとしたら彼女はこう言うかもしれない。

「それはね、お客さん。私にもさっぱりわからないのさ。学のあるお方ならひょっとしたら解けるのかもしれないけれど、何せここはバーだからね。そんなお客さんの頭も、とろけていって役立たず。私にわかるのは、これが最初の御先祖さまの仕業だってことくらいだよ」



 君が彼女の料理に舌鼓を打ち、変わった香りの酒に酔いしれたあと、席を立つときには充分に注意することだ。忘れ物があっても、君は次の熱帯夜までこの店に来ることはできないのだから。
 え、なんだって?
 おいしかったから何か包んで欲しい、だって?
 その言葉はきっと彼女を喜ばせることだろうけれど―――彼女は決して首を縦には振らないだろう。ここから何かを持ち去ってはいけない、それが古くから決まったここのルールだからね。
 それに、海の料理は新鮮さが何よりも重要だ。彼女は一人前の料理人だから、味の劣った料理を誰かに食べられるのが我慢ならないのさ。

 さて、本日の営業はここで終わり。君が酔い潰れていたとしても強制退去、朝日が出る前にはお帰り下さい。
 ではまた、次の熱帯夜に。








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【サブキャラ企画】

 パトリシア・オード・ガールヴェーラ

 先祖が遺した、「世界を渡る船」が座礁した洞窟でバーを営む女性。
 船はもともと世界中の部下が集まるために使われていたもので、複数ある扉のうち、必ず「入った扉からしか出ていけない」仕組みになっている。
 現れる場所の設定は店主の裁量次第。バーが熱帯夜にしか現れない理由は、単なる彼女の趣味である。
 かつて財宝の隠し場所でもあったそこには、ガールヴェーラ以外の者が財宝を持ちだすことを禁ずる魔術がかけられている。
 時を経て、その魔術は「何かを持ちだすことを禁ずる」掟へとすり替わっている。
 洞窟はとある島のどこかに繋がっており、彼女の居住区や魚の仕入れ場所はそこにある。


 配布キーワード↓

 女性
 10代後半~20前後・金髪ボブ
 細身・カフェ&バーのマスター・神出鬼没・辛いもの好き・元気 
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