・ネブアルデ


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▽ネブアルデ

彼は他人に深く関わることを忌避し、さらには生育環境においても自らが最も年少であった期間が長く、教え導く、ということにさほど関心も経験もない男であった。
しかしながら、彼が大事にしたいと思うようになって久しい女性については、その限りではない―――というか、何事も必要に迫られれば適応するのが人間の長所だ。例えそれが、教導と同じく適応という言葉にも縁がない、自称繊細で優雅な貴族・ネブラであっても。


教導についてのポイント・その一。前回の復習を欠かさず行うこと。

「愛情とは一方向ではなく、双方向に成る関係であると、我々は学んだように思う」
「…?」

話しかけられた、という事実に頬を上気させて微笑む姿が可愛らしい。しばし真顔でアルデレータの動向を楽しんだのち、ネブラは一瞬で忘れかけた目的を急いで手繰り寄せた。


教導についてのポイント・その二。自分で考える時間を、必ず作ること。

「思いやりもその限りではない…と、私は君に伝えたい」
「思いやり…」

恋人になったばかりの男が何を思って話しかけているのか、必死に考える姿も可愛い。陶器の指、桜貝の爪が口元を飾るのは眩暈がするほどに優美な芸術だ…が、問題意識を失くすわけにはいかぬ。ネブラは努めて意識の岸に重々しい錨を降ろす。


教導についてのポイント・その三。詰まっているようなら、答えと解説を惜しまない。

「…つまりね、私の世話は一端置いておいて、座って話でもしようか、という、提案なんだけど」
「…え、ええと、その、」



じつは、はずかしくて。
目が覚めるような呟きに瞬き一つ、「女性の扱いを学び直すべきは、私なのか」とネブラは腑に落ちた答えを眺め直した。
せっせと洗濯ものを畳む女性の姿はなんだか偶像の母のようで、ずいぶんとアグレッシブな照れ隠しだなあ、といっそ感心すら覚えながら―――手伝いは困難を極めるだろうから、せめて休息の一服を用意することにしよう。
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