※デモン・パラサイトでパロディだよ
古びた煉瓦造りの壁には錆ついた事務所の表札が掛っていたが、煤けた地色は彫り色と見分けがつかないほど。それでも目を凝らして良く観察すれば、そこには「セラフィム真道学院前支部」と書かれていることが確認できるはずだ。
迷子猫の捜索から自由研究のお手伝いまでを請け負う「何でも屋」ボランティア団体、セラフィム。それが世間の持つ彼らへの印象である。
だから、慣れた様子でそこに歩みを進める「彼」を見た人間がいたなら、きっと目撃者はこう思うに違いない。
「あっそこコンビニじゃないですよ」と。
着崩した学生服に色とりどりのメッシュ、男だてらに鳥の羽を髪飾りにつけた彼はどこからどう見ても不良学生の一員である。ボランティアという言葉に関わりを持てるとするならば、路地裏に追い詰めた罪も無き若者に向かって「おにいちゃーん、ボランティアだと思ってさァ」とか暗い笑みを浮かべる時くらいのものだろう。
けれども彼の歩みは迷いなきもののそれだった。完全なる方向音痴という可能性は残るものの、事務所の引き戸を開ける仕草には慣れが感じられる。
「今日はなんで俺呼ばれたんすか、ヴァネっさん」
「いつも通りのお手伝い、だ。説明するから座りたまえ」
引き戸を後ろ手に占める彼は、書類から目を離さずに居丈高とすら思える指示に粛々と従った。黒いスーツを纏った上からでも分かる細さ、落ち着いていながらもどこか柔らかい声は女性だということを控えめに主張していたが、その眼光は鷹のように鋭い。
(てーかあんたボランティアって似合わねぇって…)
そう、彼―――真道学院高等部留年生、レイドが思ったかどうかは、彼の身の安全を考慮して伏せておくこととする。
とんとん、と纏まったらしい書類を整えた後に、前置きもなく「ヴァネっさん」と呼ばれた女は本題を切り出した。
「昨日未明。ここより距離1km地点農場に、人とも獣ともつかぬ足跡と、収穫物が食い荒らされていた痕跡が発見された。君も知っている通り、この周囲には熊などの獣が棲めるような『山』および『林』の類は一切無い」
「…てーことは、アレっすか」
「そう、おそらくは。」
悪魔憑き。
人や動物、果ては植物に取りつきその肉体を変貌させる『悪魔寄生体』によって、既存生物が変化したものの総称。
ボランティア団体・セラフィムとは狩りの姿。
NGOセラフィムは彼ら悪魔憑きによる事件を解決すべく集まった、悪魔憑きたちによる集団である。
「君は現地に移動し、原因となった悪魔憑きを突き止めろ。対象が交渉可能な生物であった場合、交渉及び勧誘を」
「『ヴィシャス』―――暴走体であった場合は、やっぱいつも通り?」
「無論、排除だ。我々悪魔憑きと、罪なき農家の方の為にも」
「ヴァネっさん」と呼ばれた女―――セラフィム支部長、ヴァネッサ・ソルはいかにも悔しげに拳を握りしめた。そりゃ私怨っしょ、とレイドが思ったかどうかはやはり伏せておくとしよう。
余談だが、セラフィムは非営利団体なので、当然のことながら運営費などはごくごく少ないものである。真道学院支部入り口には、いつも新鮮な有機野菜を提供する農家たちによる無人販売所が共営で並立されており、御近所の奥様方には評判となっている。
古びた煉瓦造りの壁には錆ついた事務所の表札が掛っていたが、煤けた地色は彫り色と見分けがつかないほど。それでも目を凝らして良く観察すれば、そこには「セラフィム真道学院前支部」と書かれていることが確認できるはずだ。
迷子猫の捜索から自由研究のお手伝いまでを請け負う「何でも屋」ボランティア団体、セラフィム。それが世間の持つ彼らへの印象である。
だから、慣れた様子でそこに歩みを進める「彼」を見た人間がいたなら、きっと目撃者はこう思うに違いない。
「あっそこコンビニじゃないですよ」と。
着崩した学生服に色とりどりのメッシュ、男だてらに鳥の羽を髪飾りにつけた彼はどこからどう見ても不良学生の一員である。ボランティアという言葉に関わりを持てるとするならば、路地裏に追い詰めた罪も無き若者に向かって「おにいちゃーん、ボランティアだと思ってさァ」とか暗い笑みを浮かべる時くらいのものだろう。
けれども彼の歩みは迷いなきもののそれだった。完全なる方向音痴という可能性は残るものの、事務所の引き戸を開ける仕草には慣れが感じられる。
「今日はなんで俺呼ばれたんすか、ヴァネっさん」
「いつも通りのお手伝い、だ。説明するから座りたまえ」
引き戸を後ろ手に占める彼は、書類から目を離さずに居丈高とすら思える指示に粛々と従った。黒いスーツを纏った上からでも分かる細さ、落ち着いていながらもどこか柔らかい声は女性だということを控えめに主張していたが、その眼光は鷹のように鋭い。
(てーかあんたボランティアって似合わねぇって…)
そう、彼―――真道学院高等部留年生、レイドが思ったかどうかは、彼の身の安全を考慮して伏せておくこととする。
とんとん、と纏まったらしい書類を整えた後に、前置きもなく「ヴァネっさん」と呼ばれた女は本題を切り出した。
「昨日未明。ここより距離1km地点農場に、人とも獣ともつかぬ足跡と、収穫物が食い荒らされていた痕跡が発見された。君も知っている通り、この周囲には熊などの獣が棲めるような『山』および『林』の類は一切無い」
「…てーことは、アレっすか」
「そう、おそらくは。」
悪魔憑き。
人や動物、果ては植物に取りつきその肉体を変貌させる『悪魔寄生体』によって、既存生物が変化したものの総称。
ボランティア団体・セラフィムとは狩りの姿。
NGOセラフィムは彼ら悪魔憑きによる事件を解決すべく集まった、悪魔憑きたちによる集団である。
「君は現地に移動し、原因となった悪魔憑きを突き止めろ。対象が交渉可能な生物であった場合、交渉及び勧誘を」
「『ヴィシャス』―――暴走体であった場合は、やっぱいつも通り?」
「無論、排除だ。我々悪魔憑きと、罪なき農家の方の為にも」
「ヴァネっさん」と呼ばれた女―――セラフィム支部長、ヴァネッサ・ソルはいかにも悔しげに拳を握りしめた。そりゃ私怨っしょ、とレイドが思ったかどうかはやはり伏せておくとしよう。
余談だが、セラフィムは非営利団体なので、当然のことながら運営費などはごくごく少ないものである。真道学院支部入り口には、いつも新鮮な有機野菜を提供する農家たちによる無人販売所が共営で並立されており、御近所の奥様方には評判となっている。
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