「じょしりょくを手に入れたい」
とノワさんが言ったので、その日彼女たちは女子力を狩る旅に出ることにした。風の噂によれば、じょしりょくとは山の奥深く、秘境とも呼ばれる洞窟で手に入るようだ、とヒルダさんは生真面目に提案する。そうだ山へ行こう。
そうして彼女たちは武器と防具と緊急用の装備を整え、山へと向かった。いわゆる一つの山ガールである。
登山は困難を極めた。
雪山育ちのヒルダ、狩りに慣れたリコ、芯からの体育会系のノワが集まって踏破が困難であるとは不可解なものだが、女三人寄ればかしましいとは世界中の定説である。
「あっどうしようおやつ切れたのよ」
「さっきまであんなにあったのに…不思議ですね」
「ヒルダたちしか居ないのに、いつのまにか無くなってたな」
「美味しかったものねー」
「どこの店で買ってきたんだ?」
「もしかしてあの公園傍の」
「そうそう、今度みんなで一緒にいこー」
話が終わらないせいか、なかなか足が前に進まない。彼女たちはじょしりょくの入手がいかに難しい道のりであるか、その道程の半ばを行くまでもなく悟った。剣を、弓を持つ手に力が入る。これからは、今までのように気を緩ませるわけにはいかない、と。
恐ろしいことに、未だ日が高いというのに、彼女たちはひっきりなしに獣の襲撃にあった。食料の香りを漂わせ、話し声をひそめることなく進んできた人間が襲われない筈もない。しかし彼女たちは顔を前に向け、決して歩みを止めることはしなかった。
「じょしりょくといえばマカロンですから」
「あとクッキーも焼いてきた!」
「水筒にミルクティーを淹れてもらったぞ」
「「おお…」」
彼女たちの歩いた後には、地元で恐れられた獣の死体が赤い道を作っていた。実にじょしりょくであった。
たまに、彼女たちの歯車が合わないこともあった。
「…でもノワ絶対ヒルダちゃんにはスカート似合うと思うのよね!」
「うー、でもなんか頼りないかんじがするぞ…」
「少しわかります」
「わ、わかるなー!!わかりあうなー!!」
「では、ノワはスパッツを脱ぐことは無いのですか?」
「ぐっ…」
厳しい道のりであるからして、その途中で意見が食い違うことは当然だった。彼女たちは戦士であった。不和が起きたことを受け入れ、分かり合うための刃を向けあうことを恐れはしなかった。そうして彼女たちは、やっぱりケーキは人それぞれ好みがあるよね、という結論に落ち着いたのだ。実にじょしりょくであった。
そうして、彼女たちはたどり着く。
薄暗い洞窟の向こう、天の見える深い洞<ほら>に、太古の森がそのまま残る幻想的な光景をその目に納めたのだ。
「…おお…」
「…きれいだ…」
「…これが…いわゆる…」
彼女たちは、壁を流れる清水の煌めきに負けないほどの美しい輝きをもって微笑んだ。
―――これが。我らが森ガールたる由縁となる。
そうして彼女たちは凱旋へと赴いた。
じょしりょくをその身に宿した、素敵女子となった姿を、人々は感心と尊敬と(こいつらのベクトルはどこへ向かっているのだろうなあ)という素直な感想でもって出迎えたという。
ノワさんと愉快な仲間達・完
---------------
誕生日おめでとうございましたが、これは全然めでたそうでも羊さん向けでもないなと思いました。
たいへん申し訳ありません(マグマ噴きだす火山を背景に土下座)
とノワさんが言ったので、その日彼女たちは女子力を狩る旅に出ることにした。風の噂によれば、じょしりょくとは山の奥深く、秘境とも呼ばれる洞窟で手に入るようだ、とヒルダさんは生真面目に提案する。そうだ山へ行こう。
そうして彼女たちは武器と防具と緊急用の装備を整え、山へと向かった。いわゆる一つの山ガールである。
登山は困難を極めた。
雪山育ちのヒルダ、狩りに慣れたリコ、芯からの体育会系のノワが集まって踏破が困難であるとは不可解なものだが、女三人寄ればかしましいとは世界中の定説である。
「あっどうしようおやつ切れたのよ」
「さっきまであんなにあったのに…不思議ですね」
「ヒルダたちしか居ないのに、いつのまにか無くなってたな」
「美味しかったものねー」
「どこの店で買ってきたんだ?」
「もしかしてあの公園傍の」
「そうそう、今度みんなで一緒にいこー」
話が終わらないせいか、なかなか足が前に進まない。彼女たちはじょしりょくの入手がいかに難しい道のりであるか、その道程の半ばを行くまでもなく悟った。剣を、弓を持つ手に力が入る。これからは、今までのように気を緩ませるわけにはいかない、と。
恐ろしいことに、未だ日が高いというのに、彼女たちはひっきりなしに獣の襲撃にあった。食料の香りを漂わせ、話し声をひそめることなく進んできた人間が襲われない筈もない。しかし彼女たちは顔を前に向け、決して歩みを止めることはしなかった。
「じょしりょくといえばマカロンですから」
「あとクッキーも焼いてきた!」
「水筒にミルクティーを淹れてもらったぞ」
「「おお…」」
彼女たちの歩いた後には、地元で恐れられた獣の死体が赤い道を作っていた。実にじょしりょくであった。
たまに、彼女たちの歯車が合わないこともあった。
「…でもノワ絶対ヒルダちゃんにはスカート似合うと思うのよね!」
「うー、でもなんか頼りないかんじがするぞ…」
「少しわかります」
「わ、わかるなー!!わかりあうなー!!」
「では、ノワはスパッツを脱ぐことは無いのですか?」
「ぐっ…」
厳しい道のりであるからして、その途中で意見が食い違うことは当然だった。彼女たちは戦士であった。不和が起きたことを受け入れ、分かり合うための刃を向けあうことを恐れはしなかった。そうして彼女たちは、やっぱりケーキは人それぞれ好みがあるよね、という結論に落ち着いたのだ。実にじょしりょくであった。
そうして、彼女たちはたどり着く。
薄暗い洞窟の向こう、天の見える深い洞<ほら>に、太古の森がそのまま残る幻想的な光景をその目に納めたのだ。
「…おお…」
「…きれいだ…」
「…これが…いわゆる…」
彼女たちは、壁を流れる清水の煌めきに負けないほどの美しい輝きをもって微笑んだ。
―――これが。我らが森ガールたる由縁となる。
そうして彼女たちは凱旋へと赴いた。
じょしりょくをその身に宿した、素敵女子となった姿を、人々は感心と尊敬と(こいつらのベクトルはどこへ向かっているのだろうなあ)という素直な感想でもって出迎えたという。
ノワさんと愉快な仲間達・完
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誕生日おめでとうございましたが、これは全然めでたそうでも羊さん向けでもないなと思いました。
たいへん申し訳ありません(マグマ噴きだす火山を背景に土下座)
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