およそ、その性質については理想的と呼んで良い程度に、「良くできた」相手だと―――解析能力を十分に発揮させながら、人の姿をした魔剣は人の姿をした精霊を評価した。

魔力量は、蓄えにしておよそ数年分。人間とは比べるべくもない、高い生命力。魔法食いの能力にせよ、魔剣喰いの本分にせよ、アルダバランの素地を活かすことにおいては、これまで仮に定めたどの持ち主よりも「主」に相応しい力を持ち合わせている。
それが、クーンと名乗る精霊だった。

難があるとすれば。
その魂が見つめる先。

「マスター!そっちはあまり道が良くない、注意して歩け」
「大丈夫だよー、クーンは心配性なんだから」

平和そのものを謳うようなやり取りに、アルダバランは設定されたことがないはずの「頭痛」を想い、聞えよがしに溜息をついた。
全く、この能天気なものたちときたら、道を同じくする魔剣が人類種を仇敵と定めたことさえも忘れて久しいのだ。聞かせたことはなかったか?否、いつか戯れに、寝物語にと聞かせたはずだ。人への想いを。「お前が長じたのなら、殺すのも悪くない」とエコォを脅して、クーンの機嫌を害したことはまだ記憶に新しい。

 ああ、なんて無様な身の上か!
 独りよがりの憎しみは今日も行き場を失って、のどかな春風に舞い踊る。

なかなかに有用だと目をつけた精霊は人間ばかりを愛しげに見つめ、その人間はアルダバランの目に浮かぶ闇を認めることはない。幾度目かの絶望とはいえ慣れたものとは言い難く、つくづく、己は暗いものを選ぶように出来ているのだろう、と魔剣は自嘲する。



クーン。その蛇神のうつしみたる精霊にも、庇護を受ける幼子の魂にも、アルダバランにとって「それでなくてはならない」理由などない。今すぐに分かたれた道の異なる方へ進み、後を追うなと告げてしまえばそれで仕舞いになる程度の関係だ。
クーンにエコォは。あるいはエコォにクーンは。互いに必要とする仲であっても、アルダバランはそうではない。アルダバランが必要とされないように、アルダバランもまた、強く必要としているわけではなかった。

けれど、異なる道を行こうとするならば。
クーンは顔を不機嫌そうに顰め、語気を強めて言うだろう。

「マスターを悲しませるのか」

幼子が泣かずとも、その可能性があればかの男はそう言うだろう。偶然旅路を共にして、気まぐれに別れるはずだった、かの晩のように。


 引き留められる理由さえ、人間への憐憫の端役に過ぎない。
 この身の無様極まりないことといったら!



こうなっては、最早意地でしかない(そもそも、自分には意地以外の意志などあったろうか?)と、アルダバランは己を分析する。
彼の、クーンの心による悲しみが得られると確信するまでは、アルダバランはこの呆れるほどに腑抜けた旅路を続けなければならなかった。

人の存在を超えるためには、人を殺せばいい。
しかし、エコォを殺したところでクーンの内にある感情を消せるわけでもなければ、クーンを殺して全てを無かったことにするにはその存在は有用すぎた。
だから、アルダバランは意地を張る。

クーンの言葉によって引き留められる時こそが、道を違える時だ、と。




それが意地でしかないことは、アルダバランの解析能力が正確に告げていた。
旅を続ければ続けるほど、エコォの情が深くなるならば。
クーンがエコォをもって理由にすることを、止めよう筈もないのだ。



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わかりにくいしわかるように書く方法がわからなかったので説明:

アルダさんは色々言い訳してるけど、エコォさんを大事にしてるクーンさんがそこそこ気に入っているので、まあそんな無様なワタシもいいんじゃね?と結構今の状況を楽しんでいる。

まあ楽しんでないと無様とか言えないよねアルダのプライドくっそ高いからね…という…

/・w・\わかんねーよ!!

※ついろん掲載から呼称を訂正しました
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